僕の皆既日食体験は、終わりました。
月の影に入りこんだ、三日月型太陽をブラックグラス越しに眺めながら
「日食」は、東京でも大阪でも福岡でも観測できましたあああ!――というTV報道を目にしました。
小学館ビルの屋上で見えたぞ、とメールしてきたマーケティング局の同期もいます。
確かにそうかもしれません。が、「皆既」と「単なる日食」とは、完全に別物です。
これは現地で体験した人にしか分からない、超常的ともいえる宇宙の神秘であり奇跡の瞬間。
皆既日食はある種、exclusive な現象です。 少なくとも980円のデイリーな赤ワインとラターシュのビンテージ物の差異より、はるかに大きな乖離があります。
wwwwラターシュなんて5年くらい飲んでないけどねwwww
う~、ゴキゲンな赤ワインが飲みたい。
屋久島に来てから焼酎三昧。
しかも「三岳」ばっかり。 この芋焼酎は凄く美味しい。でも飽きた。
というわけで、屋久島では小原比呂志さんご一家に本当にお世話になりました。
バス停までジムニーで迎えに来てくださった小原さんの奥様、美味しい手料理で歓待してくださったお母様、
突然登場する僕をいつも素敵な笑顔で迎えてくれた、お嬢様とご子息。皆様の親切に心より感謝します。
ところで僕が小原比呂志さんを知ったのは、つい10日ほど前でした。
紹介してくれたのは、アウトドア作家・シェルパ斉藤氏。
「屋久島行くんだったら僕の知り合いのガイド・小原さんに電話しとくからさあ、訪ねてみてよ~」と 小学館本社ビルのエレベーターの中で、彼は超お気楽にいいました。
僕はその時、屋久島でネイチャーガイドをやってる「単なるシェルパ斉藤氏の友達の小原さん」と理解したのです。
それがフツーの反応でしょ。
ところが、いろいろ調べさせていただくと、続々と驚愕の事実が・・・。
小原さんは、日本のエコツーリズムの草分け的存在でした。
北海道・帯広市の出身でありながら、鹿児島大学水産学部を卒業し、屋久島にやってきて20数年。
世界自然遺産の島に於ける観光と自然との調和を追求する 「
屋久島野外活動総合センター(YNAC)」の重鎮。
さまざまな大学や市民フォーラムで自然とエコツーリズムに関する講演をし
屋久島警察が主催する「山岳登攀技術講習」の講師も務め
作家・田口ランディ氏の
『ひかりのあめふるしま屋久島 』に登場する極めて有能なガイド、その人だったのです。
そして僕が一番驚いたのは、その小原さん自身の口から
「コバヤシさんがPLATINUM SERAIの創刊号で書いていた事、僕たち観光業の人間にもすごく刺さりました」
という一言でした。
その時、僕は彼が何を言っているのか全然分かりませんでした。
屋久島の濃密な原生林に囲まれ、青い海を望む素敵なログハウスで
このエコツーリズムの神は、突然何を言い出したんだ、というのが、率直な感想です。「WHEELS OF CONFUSION」!
そして・・・小原さんが指摘する「僕が書いていた事」が、
創刊号に記した「創刊にあたって」の一文だと理解するのに、恥ずかしながらかなりの時間を要したのです。
僕は8ヶ月前の創刊号に
ビジネスパーソンにとって常に考えることは以下のふたつである、と偉そうに書いてしまいました。
「第1に顧客満足度を極限まで高めるためにすべきこと、第2に短期、中期、長期での利益の追求」 この言葉を彼は、きちんと記憶していました。書いた本人より正確に(すみません!!)
そして自分のような観光業、ガイド会社を運営する人間にとって
この2点ほど重要なことはない、と僕に語るのです。
さらに驚いたのは彼が、創刊号から最新号に至る全「PLATINUM SERAI」を購読してくれていた事実です。
屋久島の本屋さんに弊誌はありません。当たり前です。
ビジネスパーソンのライフスタイル誌のマーケットとは、真逆の世界自然遺産の島なのですから。
そんな土地で小原さんは、鹿児島からわざわざ弊誌をお取り寄せして、熱心に購読してくれていたのです。
編集者にとって、これ以上の感激はありません。
見知らぬ土地で初めて出会った人が、自分の編集する媒体の愛読者だった。
しかもあまりにもかけ離れた、接点が想起できない領域で仕事をされる方が。
これは「1Q84」を編集する喜びとはまた違った、編集者のみが甘受できる感動体験です。
小原さんとは、彼のお母様と奥様が作ってくれたすばらしい手料理を堪能しながらさまざまな話をしました。
皆既日食の話、縄文杉の話、屋久島の珊瑚礁について(実は僕はダイバーです)、野生生物との共生に関して、
屋久島の観光業の問題点と理想形、コスタリカのビジネスモデル、出版業界と雑誌の未来、webと携帯・・・
でも僕はどこか話題に没頭できなかったのです。うわの空。頭の片隅に、想定外の熱心な読者が存在する事実がありました。
そんな読者のCSにどう具体的に媒体として対応するのか?ウジウジとそんなことばかり考えていたからです。
初めての屋久島――それは、感動と課題をたっぷりいただいた、最高の旅でした。
お世話になった小原さんご一家。日食に合わせ静岡、神戸、鹿児島からの来客も宿泊していて、3人家族の僕には新鮮な空間でした。
屋久杉があまりにも有名ですが、屋久島はカヤック、ダイビングさまざまな楽しみ方を満喫できる楽園。
『PLATINUM SERAI』小林慎一郎